2011年08月24日

小説もどき『 闇からの逃亡 』  By omune

 遠くに救急車のサイレンが聞こえる。人気のない倉庫街を大宗は一人疾走していた。コンクリートの壁に、革靴の音が反響する。街燈のオレンジ色に、手にしたナイフが明滅した。
「くそっ」
 汗を吸い始めたスーツが、大宗の足かせとなっていた。ぜえぜえと乱れた息が、狭い横道へと飛び込んでいく。と、そこで大宗の足が止まった。
「な、なんだ……?」
 数メートル先で、看板の蛍光灯が何か黒い物体を照らし出していた。いや、物体ではない。ゆらゆらと蠢く漆黒の穴が、まるでトンネルの入り口のように浮いていたのだ。そして間髪を入れず、その中から銃口が突き出された。
「逃げられないぜ」
 トンネルから現れたのは、黒のスーツとサングラスの若い男だった。レンズに映りこむ街燈が、獣の眼光の様に不気味に光る。
「う……」
 男から視線を逸らさないままに、大宗はじりじりと距離を開く。しかし、相手は銃口をこちらに向けたまま、滑るように追随してきた。
 スーツのポケットにはメモリーカード。情報を待つ仲間との合流ポイントまであとほんの数百メートルだ。ここまできて諦めなくてはいけないのか。せめて銃弾さえ残っていれば。
「いやだ」
 視線を黒のスーツに向けて、大宗はやがて足を止めた。手にしたナイフの切っ先が、まっすぐ男に向けられる。
「俺はもう逃げない。お前さえ倒せば情報は公開され、あいつは終わりだ」
「倒せるかな?」
 男の口角がわずかに上がった。
「倒す、絶対に。俺は今までずっと逃げ回ってきた。目の前の障害から、ずっと後さずりで逃げてきた。でも、俺はもう逃げない! 前に進むんだ。もう後さずりはたくさんだ!」
「おい! ちょっと待て」
 大宗の語尾に男の叫びがかぶさった。
「大宗さんよ、あんた……、まさか」
 それまでの殺気が消えている。男は銃を下げ、一歩一歩、ゆっくりと大宗に近づいた。その口元には何故か満面の笑みが浮かんでいる。
「な、なんだ? どうした?」
 動揺する大宗の肩に、ぽんと男の手が乗せられた。そして――







「な、なんだと……!」
 男に耳打ちをされた、大宗の顔色がみるみる変わった。
「う、う、うああああっ!」
 取り落とされたナイフが路面を叩く。両手で頭を抱え込み、大宗はがっくりと膝を付いた。
「『後さずり』じゃなくて『後ずさり』? じょ、じょ、冗談だろう?」
「冗談でも嘘でもないさ。残念だったな大宗さんよ」
 嘲りの口調に乗せて、男は大宗の眼前に何かを投げた。小さな本だ。
「調べてみなよ。待っててやるから、さ」
 ポケット国語辞典。街燈に照らされたその本を、大宗は夢中でめくる。
「ほ、ほんとだ。『後ずさり』あるいは『後じさり』……。嘘だ、嘘だっ! 嘘だああ!!」
 天を仰ぐ大宗の顔に水滴が落ちる。やがて大粒の雨が、倉庫街のアスファルトを濡らしていった。



 ……あああああ。


 反省隊\(_ _*)m(_ _)m(*_ _)/参上!


 ごめんなさい、ごめんなさい。悪気はなかったんで許してくださいいいっ!

 要はあれですよ。つまりは『後ずさり』を『後さずり』と間違えていたという事を言いたかったわけですよ。これは本当のことです、はい。

 幾つぐらいまででしたかねえ。どこでそう覚えたのか分かりませんが子どもの頃からずっと、たぶん二十歳くらいまでだったと思います。友人に指摘されるまで、私はずっと『後さずり』だと信じ込んでいたんです。

 子どもの頃はよくありませんか? うちの娘も少し前までは『がんばる』を『まんがる』と言い間違えてました。でも、二十歳まで気づかなかったというのは、なんとも恥ずかしい話ですね。

 本を読んだり、そう頻繁ではないにしろ誰かが使っているのも聞いたことはあったでしょう。なのに、どうして気が付かなかったのかなあ。今考えても不思議です。こういうの、皆様は経験ありませんか? 歌詞などではたまにそんな話も聞きますよね? え、聞きませんか? そうか、聞きませんかあ。私だけかあ…… (_ _。)
ラベル:小説 言葉 勘違い
posted by omune at 00:56| 東京 ☁| Comment(2) | TrackBack(0) | 創作、制作 | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
こんにちは。
ドキドキしながら記事を読んでいました。
アクション?ううん、SF小説?
なんて想像をしながら…えっ!あれれ?
オチで現実に引き戻されました。

ええ…ありますとも
今日は『奇遇』という言葉を間違えて使ってしまいました(;_;)
Posted by balm at 2011年10月04日 15:00
 balm様、駄文にお付き合いくださいまして、まことにありがとうございます。

 また、自分が遊びたくなった時にこういうネタをやると思いますので、その節は呆れず読んでやっていただけましたら幸いです。

 用法の間違いは私も頻繁にやりますよ。注意はしているつもりですが、なかなか思うようにはいきません。困ったものです。
Posted by omune at 2011年10月05日 03:29
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